「障害があるままに自由になる」 黒田如水の〝障害〟とリーダーの〝資質〟【大竹稽】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「障害があるままに自由になる」 黒田如水の〝障害〟とリーダーの〝資質〟【大竹稽】

障害があるままに自由になる 〜黒田如水の障害 第1回〜

 

◾️なぜ官兵衛は動乱の世の中で「水の如く」あろうとしたのか?

 

 官兵衛は動乱の世の中で「水の如く」あろうとしたのでしょう。水、そして川や海には、わたしたち(特に日本人)の感性を刺激するなにかがあるようです。昔から水は「時の流れ」「無常」の例えとして詠まれています。

 方丈記の全編を読まれていない方でも、冒頭の「ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」は耳にしたことがあるのではないでしょう。諸行無常、世のはかなさとその尊さが、「川」によって表現されています。

 辞世の句(現代語表記に直します)、「思い置く言の葉なくてついに行く、道は迷わじなるにまかせて」など、まさに日本の美意識がこの一句に凝縮されていると言えるでしょう。

 死にゆくその一点で生が「なるにまかせて」として紐解かれるとは、これこそ「水の如く」の真骨頂なのではないでしょうか。

 

 さて、この五則を読んでのアルアルですが、あなたのお気にいりの一句はどれでしょう?

 

 禅僧たちと話をしていると、必ず主題になるのが第二則です。

 

 「つねに己の進む道を求めてやまざるは水なり」

 

 己を鍛え、磨き、徹底的に究明しようとする禅宗らしい一節ですね。

 力強いこの句から、水の「道」とは、障害のない平坦な道でないことが読み取れます。巨岩が行く先を遮っていたとしても、滝のような落差があったとしても、立ち止まったり落ちたり、道を変えたりしながら水は進みます。そしてそれが、振り返ってみたら「なるにまかせて、道になっていた」と認められるのでしょう。「なるにまかせて」にはあきらめが読み取れることは確かですが、これは放棄を意味するあきらめではありません。あらゆるものを経験し、己を貫いた如水だからこそできた、触れる人間たちを鼓舞するあきらめです。

 この力強さが際立つのが第一則「自ら活動して他を動かしむるは水なり」です。これは、しばしばリーダー向けのメッセージとして引用されます。戦国時代の英雄譚で物語となる官兵衛は、「自ら活動して他を動かしむる」の権化と言えるでしょう。

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「障害」?「才能」だ!

子供が授かっている力を開花させる学び場を横浜横須賀で創る

異色の哲学者・大竹稽の挑戦

「こども禅大学」クラウドファンディング始動

 

https://camp-fire.jp/projects/view/752443

 

 

「障害」診断は子供の才能を制限するものではありません。でも、お母さん達はそんなレッテルに悩み、「不安・不確実」な未来に悩んでしまいます。そんなお母さん達の心と考えをお手当てします。是非皆さまのお力添えをお願いいたします。

 はじめまして。「こども禅大学」代表、大竹稽です。2024年4月までに、教育関連・哲学関連の書籍を21冊、出版しています。

 大学では哲学研究を続けてきましたが、2014年の中退以降はお寺でのリアル寺子屋を神奈川や東京、京都で開いてきました。

 この教育活動の中、我が子が「障害」診断されたことで悩んでいるお母さん達とつながるようになってきました。お母さん達は、我が子の特性に気づいています。その特性は決して学習や仕事の「障害」になるものではありません。ただ、決められたスピードと平均的な成果を要求される集団での学習システムに、どうして子供がなじめないのです。そして転校や不登校を「選ぶ」ことになったり、あるいは中退を「選ぶ」ことになったりします。

 確かに、どの子供達も生きづらさを感じています。しかしそれ以上に、お母さんの悩みは大きいことを、生々しく知りました。そしてその悩みは、子供の才能を「束縛」「制限」させる方向に働いてしまいます。「困らないようにする」「できないことをなんとかする」という意識は、「出過ぎないようにする」へと導いてしまうからです。そしてさらにお母さんの悩みは深くなってしまいます。

 私は、著作や講演を通して、即効性だけを求めるテクニックに警鐘を鳴らし続けてきました。失敗や道草の大切さを伝えてきました。「秒速」「爆速」などと形容されるようなテクニックは、むしろ長い目で見れば手枷足枷、思考の歪みになることを誠心誠意、警告しています。

 しかし、相変わらず、成功やキャリアに縛られた即効性と成功実績をうたう学習塾がもてはやされています。でも、当事者のお母さん達は、それが本物の学習でないことに気づいています。当事者ではなくても、本物の学習を模索する大人達も増えてきました。

 今は時代の潮目です。未来を憂えるならば、この潮目に動かなければなりません。2024年の春、「こども禅大学」という看板を掲げ、お母さん達の悩みと心をお手当てし、どの子供にも備わっている自発力と向学心を開花させる活動を開始します。私の地盤である神奈川の知己に声をかけました。活動の賛同者・監修者として、信頼する禅僧や議員達が集ってくれました。

 そしてこのクラウドファンディングを介して、さらに多くの賛同者に出会えることを願っています。

 

大竹稽

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大竹稽

おおたけ けい

教育者、哲学者

株式会社禅鯤館 代表取締役
産経子供ニュース編集顧問

 

1970年愛知県生まれ。1989年名古屋大学医学部入学・退学。1990年慶應義塾大学医学部入学・退学。1991年には東京大学理科三類に入学するも、医学に疑問を感じ退学。2007年学習院大学フランス語圏文化学科入学・首席卒業。その後、私塾を始める。現場で授かった問題を練磨するために、再び東大に入学し、2011年東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修士課程入学・修士課程修了(学術修士)。その後、博士後期課程入学・中退。博士課程退学後はフランス思想を研究しながら、禅の実践を始め、共生問題と死の問題に挑んでいる。

 

専門はサルトル、ガブリエル・マルセルら実存の思想家、モンテーニュやパスカルらのモラリスト。2015年に東京港区三田の龍源寺で「てらてつ(お寺で哲学する)」を開始。現在は、てらてつ活動を全国に展開している。小学生からお年寄りまで老若男女が一堂に会して、肩書き不問の対話ができる場として好評を博している。著書に『哲学者に学ぶ、問題解決のための視点のカタログ』(共著:中央経済社)、『60分でわかるカミュのペスト』(あさ出版)、『自分で考える力を育てる10歳からのこども哲学 ツッコミ!日本むかし話(自由国民社)など。編訳書に『超訳モンテーニュ 中庸の教え』『賢者の智慧の書』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)など。僧侶と共同で作った本として『つながる仏教』(ポプラ社)、『めんどうな心が楽になる』(牧野出版)など。哲学の活動は、三田や鎌倉での哲学教室(てらてつ)、教育者としての活動は学習塾(思考塾)や、三田や鎌倉での作文教室(作文堂)。

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